一人で描くか、誰かと描くか。マンダラ塗り絵が心に与える効果

日々の生活の中で、ふと心が落ち着かないときや、自分自身を見失いそうになることはありませんか。カウンセリングの現場でも、言葉による対話だけでなく、色や形を使ったアプローチを取り入れることがあります。その代表的なものの一つが「マンダラ」です。
マンダラはもともと宗教的な背景を持つものですが、心理学者のユングがその心理的効果に着目し、心の調和を取り戻すための手法として広まりました。最近の研究では、このマンダラを描くことが私たちの幸福感や精神的な安定にどのように寄与するのか、より詳しく分かってきています。
今回は、マンダラ塗り絵が持つ「癒やしの力」について、最新の研究結果を交えながらお話しします。
マンダラ塗り絵と心の変化
ある研究では、大学生を対象に「一人でマンダラを塗るグループ」と「数人で一つのマンダラを塗るグループ」に分け、その前後の心理状態を調査しました。
その結果、どちらのグループにも共通して見られたのが、精神的な深まりや、目に見えないつながりを感じる感覚(スピリチュアリティ)の向上でした。複雑な幾何学模様に集中して色を置いていく作業は、それ自体が一種の瞑想のような役割を果たし、私たちの内面に静かな変化をもたらしてくれます。
「一人」と「共同作業」の違い
興味深いのは、一人で描く場合と、誰かと一緒に描く場合で、得られる効果に差が出た点です。
一人で没頭する時間は、自分自身の内面を見つめ直し、心の静寂を取り戻すのに役立ちます。一方で、誰かと協力して一つの作品を仕上げる「共同マンダラ塗り絵」には、より強い幸福感を高める効果があることが分かりました。
他者と同じ空間を共有し、一つの目的(塗り絵の完成)に向かってやり取りをすることは、ポジティブな感情を引き出し、主観的な幸せの感覚をより大きく膨らませてくれるのです。
日常にマンダラを取り入れる
この研究結果は、私たちの日常生活にもヒントを与えてくれます。
もし今、あなたが自分の内面をじっくり整理したいと感じているなら、静かな部屋で一人、マンダラに向き合ってみるのが良いでしょう。一方で、もし孤独感を感じていたり、もっと前向きなエネルギーが欲しいと感じていたりするなら、家族や友人と一緒に塗り絵を楽しんでみるのも一つの手です。
マンダラには、バラバラになりそうな心をつなぎ合わせ、調和させる力があると言われています。上手く描こうとする必要はありません。選ぶ色や筆の進め方に、今のあなたの心がそのまま表れます。
言葉にするのが難しい感情があるとき、色鉛筆を手に取ってみる。そんなシンプルな習慣が、あなたの毎日を少しだけ穏やかで、幸せなものに変えてくれるかもしれません。
Liu, C., Chen, H., Liu, C.-Y., Lin, R.-T., & Chiou, W.-K. (2020). Cooperative and Individual Mandala Drawing Have Different Effects on Mindfulness, Spirituality, and Subjective Well-Being. Frontiers in Psychology, 11, 564430. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.564430
