夫婦喧嘩がくり返されるのはなぜ? 『夫婦・カップルのためのアサーション』を読んで
こんにちは、かささぎ心理相談室です。
「話し合おうとするといつもけんかになってしまう」「同じことで何度もぶつかる」——そんなお悩みを抱えるご夫婦は、とても多くいらっしゃいます。今回は、そんな方々にぜひ読んでいただきたい一冊をご紹介します。
野末武義さん著、『夫婦・カップルのためのアサーション』です。

夫婦喧嘩はなぜなくならないの?
まず、この本が教えてくれる大切な視点をご紹介します。
夫婦の間で起こる葛藤や問題は、どちらか一方だけが悪いわけではありません。著者はこれを「カップル・ダンス」という言葉で表現しています。
葛藤や問題を解決しようとがんばっているにもかかわらず同じような悪循環が繰り返されることを、カップル・ダンスと呼びます。
つまり、二人がそれぞれ「問題を解決しよう」と必死になるほど、かえってこじれてしまう——これが夫婦喧嘩の悪循環の正体です。ダンスと同じで、どちらか一方だけがステップを変えても、うまく踊れません。二人それぞれが少しずつ変わることが必要なのです。
よくある「悪循環パターン」、あなたはどれ?
この本では、夫婦によくある悪循環のパターンがいくつか紹介されています。心当たりはありませんか?
① ぶつかり合いのパターン
お互いが自分を正当化して相手を責め合うタイプの喧嘩です。実は根っこには、
パートナーに認めてほしい、理解してほしい、共感してほしい、甘えたいという欲求が強くあり、それが満たされていないと感じると……怒りを感じます。
言いたいことはぶつけ合えるのに、話し合いで解決できない——そんな夫婦に多いパターンです。
② 距離を置くパターン
表面上は穏やかでも、お互いに本音を言わず、心の中では不満がたまっていくタイプです。「うまくいっている夫婦には葛藤がない」という思い込みから、問題をなかったことにしてしまいます。
③ 追いかける・逃げるパターン
一方が近づこうとすればするほど、もう一方が逃げてしまう——このパターンに陥っているご夫婦はとても多いです。著者は
追えば追うほど逃げられる、逃げれば逃げるほど追われるという悪循環
と表現しています。追う側は「向き合ってくれない」と不満を感じ、逃げる側は「求めすぎる」と感じている。二人とも、ある意味では正解なのです。だからこそ、どちらも少しずつ変わることが求められます。
「パートナーを変えよう」がうまくいかない理由
喧嘩のたびに「この人が変わってくれれば……」と思ってしまうのは、誰でも経験があるのではないでしょうか。でも、著者はこう言っています。
パートナーを変えようとがんばればがんばるほど、パートナーはかえって変化を拒むことになりがちです。むしろ、まず自分自身が少しだけでも変化することです。自分が変化するとコミュニケーションが変わり、それによってパートナーも変化しやすくなります。
耳が痛いかもしれませんが、これはとても本質をついた言葉です。相手を変えようとするエネルギーを、自分のコミュニケーションを少し変えることに使ってみる——それだけで、関係が変わり始めることがあります。
「アサーション」って何?
この本のキーワードが「アサーション」です。難しそうに聞こえますが、一言で言えば
自分の気持ち、考え、欲求などを率直に、正直に、その場の状況に合った適切な方法で述べること
つまり、自分も相手も大切にする自己表現のことです。
自己表現には大きく分けて3つのタイプがあります。
- 非主張的:自分の気持ちを抑えて、相手に合わせてしまう(「言えない」)
- 攻撃的:自分の気持ちをぶつけるが、相手を傷つけてしまう(「言いすぎる」)
- アサーティブ:自分の気持ちを伝えながら、相手のことも尊重する(「ちゃんと言える」)
夫婦喧嘩で悩んでいる多くのご夫婦は、「非主張的」と「攻撃的」を行ったり来たりしているケースが多いように感じます。普段は我慢して(非主張的)、限界を超えると爆発する(攻撃的)——というパターンです。
「察してくれて当然」という思い込みに注意
この本では、夫婦関係をこじらせる「非合理的な思い込み」も丁寧に解説されています。特に多くの方に当てはまるのが、こちらではないでしょうか。
パートナーが自分のことを本当に愛しているのであれば、自分の気持ちや考えや欲求を言わなくても察してくれるはずだ。
「愛しているなら言わなくてもわかるはず」——この気持ち、よくわかります。でも著者はこう言います。
どんなに愛し合う夫婦でも、気持ちや考えや欲求を察することには限界がある。パートナーが察してくれることを期待するよりも、自分から適切に表現する努力が大切だ。
「察してほしい」から「伝えてみよう」へ——この小さな意識の変化が、関係を大きく変えていきます。
喧嘩は「危険」であり「機会」でもある
最後に、私がこの本で一番好きな言葉をご紹介します。
夫婦が危機に直面したとき、それは
自分やパートナーが苦しみを味わい、家族や人間関係が壊れてしまう危険性を秘めている一方で、それを乗り越えることができたら、以前よりも大きく成長し、関係がよりよくなる機会になる可能性も秘めている
つまり、「危機=危険+機会」なのです。そして
試行錯誤を続けながら危機を乗り越えることができると、二人の絆は以前よりもいっそう強いものになるでしょう。
夫婦喧嘩がくり返されているということは、それだけ二人の間に向き合うべき何かがある、ということかもしれません。
大事なものは、たいてい面倒くさい。(宮崎駿)
夫婦という関係も、まさにそうなのかもしれません。
まとめ
『夫婦・カップルのためのアサーション』は、夫婦喧嘩の仕組みをわかりやすく解説しながら、「どう変わればいいか」を具体的に教えてくれる一冊です。「相手を変えたい」と思っている方ほど、読むと発見があると思います。
もし夫婦のコミュニケーションについてお悩みのことがあれば、かささぎ心理相談室にお気軽にご相談ください。
野末武義著『夫婦・カップルのためのアサーション』(金子書房)
