神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士
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ストレスを軽減する方法

ストレスという言葉は、もともとは、物体を圧縮したり引き延ばしたりしたときにその物体に生じる「ひずみ」を意味した、機械工学的な用語だったそうです。H.セリエという学者が、その用語を人体に適用してから、しだいに広まっていき、現代では「ストレス」という言葉は日常用語となっています。きっと、現代人の多くが感じているひずみを言い表すのにぴったりした言葉だったのでしょうね。カウンセリングでは、このストレスをどうするのかということも、しばしばテーマとなります。

ストレスを与えるものを「ストレッサー」と呼びます。ストレスが原因で調子を崩している方にとって一番簡単に改善に結びつくことは、ストレッサーを除去することでしょう。仕事の内容が手に負えないものであれば、それは誰かに任せて別の仕事に振り替えてもらうとか、仕事量が多すぎるならば幾分かを人にやってもらうなどです。なんらかの人間関係がストレッサーならば、その人から離れるということになるでしょう。なにか気がかりなことがあって、正面から取り組むことでそれが無くなるのなら、ちょっと負担がかかるけど、時間をとって取り組んで片付けてしまうのも一つの手です。

しかし、カウンセリングに来る方の場合、ストレッサーの除去は、いろいろな事情で難しいという場合がほとんどです。だから、「ストレッサーから離れなさい」と言ってそれでおしまいというのでは、専門家としては失格です。こういうとき、カウンセラーは、ストレスへの抵抗力を増やし、受けるストレスの量を減らすための工夫を話し合ったりします。ストレスで調子を崩している方のカウンセリングでよく話し合う内容を次のように整理してみました。

睡眠を十分に

心身の不調が続くときにまず検討したいことは、睡眠の質と量に改善の余地はないか、ということです。十分な睡眠をとることは、脳を休めて、ストレスに対する抵抗力を高めますが、ストレスが過重になると、体の緊張状態が続くため、眠れなくなってしまい、ストレスに対する抵抗力が弱まってさらに調子を崩して・・・という悪循環をきたすことがしばしばあります。

睡眠の量は適切か(人によって個人差があるようですが、だいたい6~8時間ぐらいが十分な睡眠時間という方が多いようです)、質のよい睡眠がとれているか(夜中に何度も目を覚ましたり、明け方に目を覚ましてそのまま眠れないような場合は、深い睡眠が取れていないと思われます)といったことを確認して、問題があれば、その改善のための方策を話しあいます。

月並ですが、ぬるい風呂に長くつかる(半身浴や足湯なんかも効果的なようですね)とか、寝る前に軽いストレッチをして筋肉を伸ばすとか、そういうことでも、ある程度は、睡眠の改善につながります。筋弛緩法という簡単なリラックス法をやってもらうようなこともあります。ただ、あんまり不眠がひどい場合は、医療機関を受診して、不眠のお薬をだしてもらうことを勧めたりもします。睡眠時無呼吸症候群で、深い睡眠がとれずに、ひどい神経疲労状態になっている場合などもあるので、そういう場合も、専門の医療機関を受診することが役に立つでしょうね。

対処できるように/強く葛藤しなくて済むように/未来が予測できるように

その次に、ストレッサーはそのままにして、ストレスを軽減できる方法を話し合います。「ストレッサーがそのままなのに、受けるストレスの量だけ減らすことなんてできるの?」と言われそうですが、心理学では、ネズミを使った、ストレスに関する有名な実験で、次のようなことが分かっています。煩雑になるので、実験の詳細は省きますが、結論だけ簡単に紹介すると、ネズミに同じ量の電気ショックを与えても、

できた胃潰瘍が小さかった(≒受けるストレスの量が少なかった)、というものです。

この結果を人間にもそのまま当てはめることができるとすれば、ストレッサーに対処できるという感じを増やしたり、ストレスがかかってもそのことで葛藤しないように工夫したり、ストレスを受ける時期やストレスの内容を予測できるようにすることが、ストレスを軽減するのに役に立ちます。

具体的な例を挙げます。例えば、新任の先生が、ある生徒の保護者からことあるごとに非難されて、同僚の先生からも文句を言われて、どう対応したらいいかわからずに強いストレスを感じているとすれば、カウンセリングで、その保護者への対応方法や、学校の先生たちの間での身の処し方などを、かなり具体的に話し合っていくことは、「対処できる」という感じを増やすのに役に立つでしょう。例えば、不登校の子が、学校に行くとつらい思いをするけど、家にいると親に怒鳴られる、というような状況にあって、毎朝学校に行こうか行くまいかひどく葛藤をしているのであれば、この1週間は怒られても絶対に学校に行かない、と前もって決めておけば、葛藤の軽減に役立つでしょう。例えば、裁判で訴えられて不安に駆られている人にとっては、裁判がどういう進行をするのかや、その具体的な日程を知ること、法的にどの程度の範囲の不利益が生じるのかを知ること等は、未来を予測するのに役立つでしょう。いずれも、ストレッサーは変わらなくてもストレスの量を少し減じてくれると考えられます。

物事の考え方、とらえ方に働きかける

ストレッサーを変えることができない場合、代わりに、ストレスを感じている人の、ストレッサーのとらえ方や、ストレスを増やしている考え方を検討していって、受けるストレスの量を減らしていこうと試みたりもします。

例えば、「完璧でないと意味がない」というような物事のとらえ方をする人は、その完璧主義のため、負う必要のない様々な負担を自分で作り出しているかもしれません。あるいは、「自分は他の人よりも良い扱いをされなくてはならない」と考える人は、不公平な扱いを受けた、と感じた際に、その事態を強いストレスとして感じるかもしれません。もちろん、いろんな考え方、物事のとらえ方があっていいのですが、それが自分の首を絞めるようなことになっていないかを検討して、穏やかな考えができるようになると、余計なことにストレスを感じなくて済むようになります。

ちなみに、「認知療法」は、このような、「考え方」や「物事のとらえ方」(認知)を変化させていくことに特に焦点を当てて発展したカウンセリングの技法です。

目の前にストレッサーがない時に、そのことを考えなくて済むように

カウンセリングをやっていると、家でも、仕事のことなどのストレッサーのことが頭を離れない、と訴える人にしばしばお会いします。こういう方は、自宅など休養するべき状況でも、脳がストレスを感じていて、体を緊張させるような指令を出し続ける状態になっていると考えられ、メンタルヘルスの維持にとって悪い状態と言えます。そういう方には、没頭できるような趣味を見つけてもらったり、役に立つ気晴らしを考えてもらったりもします。女性の方の場合は、おしゃべりが気晴らしの方策として取られることが多いようですね。これらは、ストレッサーを離れた時に、自律神経の興奮が続いている時間を少しでも短くする、という意味あいがある、と考えられます。人によっては、自律訓練法という自己催眠の方法を練習してもらって、体の緊張を直接緩めていくようなやり方でカウンセリングを進めていくこともあります。

やっていることに意義を見出せるように

これは、カウンセリングをやっていて、経験的に感じることなのですが、自身の仕事や自分のやっていることに意義や意味を見出している方は、多少のストレスで調子を崩すことは少ないと感じる一方で、なにをやっても評価されないとか、やっていることに意味があるのだろうか、など、自分のやっていることに自信が持てなかったり、疑問や徒労感を感じている方は、不調をきたしやすいように感じます。

様々な視点から、自分のやっていることの意味や、その社会的意義などを検討して、ストレスとなっている出来事に意味を見出していくことも、ストレス対策としては、役に立つのではないかと考えています。

ソーシャルサポート

ソーシャルサポートとは、周りの人が与えてくれる様々な支援のことを指し、間接的にストレスを軽減してくれるということがわかっています。もう少し平たく言うと、我々は、誰かが自分を見てくれていて、自分の大変な状況を理解してくれている、と感じるときに、どうも、ストレスに対する抵抗力が高まるようです。逆に孤立無援の時は、ストレスに対して脆弱になるということでもあります。

以上、ストレスを軽減する方法を述べてきました。

ストレッサーが変えられないから、誰かに相談しても意味がない、と、人はしばしば思いがちです。しかし、身近な人に、負担になっていることを話すだけでも、おしゃべりが好きな人なら気晴らしにもなりますし、相手に理解してもらえれば、そのことがソーシャルサポートにもなります。特に意識していなくても、誰かに話しているうちに問題点が明らかになって整理されていき、行動の選択に迷いや葛藤がなくなったり、経験ある人にアドバイスをもらって対処方法を学んだり、ストレスになっている事態が今後どうなるか見通しが立ったりすることもあります。自信がなくなっているときに、相談している相手から、思わぬ視点を提示されて、自分のやっていることに再度意味を見出して、しんどいけど頑張ろうという気になったり、自分の物事のとらえ方の偏りに気づくことだって、よくあることです。「人に話す」ということは、普段、なにげなく行われていることですが、あらためて考えてみると、ストレスを緩和するいろんな機能があるものではないでしょうか。

 


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