神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士
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悪夢とPTSD(トラウマ)

悪夢とは、寝ているときに見る嫌な夢や怖い夢です。

これまでの人生をふりかえってみれば、誰しも一度や二度は「悪夢を見た」という経験をもっているのではないでしょうか(もちろん、幸せなことに「悪夢なんて見たことない」という人もいるでしょう)。

トラウマ(心的外傷)を抱えた人々にとっても悪夢はしばしば見られる悩みです。覚醒時のフラッシュバックや、不快な記憶の想起と並んで、悪夢はトラウマの「再体験」という症状でもあります。

悪夢の頻度

では、一般的には人はどれくらいの頻度で悪夢を見るのでしょうか?

ある調査()によると、「この1ヶ月間、恐ろしい夢で目が覚めることはありましたか」という質問項目に対する回答は、「常にあった」が0.2%、「しばしばあった」が1.1%、「ときどきあった」が6.0%(合計7.4%)だったそうです。

一方で、PTSDを発症しているトラウマ生存者はより高い頻度で悪夢を見ます。PTSDのあるベトナム帰還兵の52%が頻繁に悪夢を見たとの研究もあります()。

子どもの睡眠障害に、夜驚症や夢遊症といった症状が見られることがありますが、悪夢もしばしば伴っています。一般に、大人と比べて子どもの方が悪夢を見る頻度は高いのです。また、思春期前後には、心や身体の変化に伴って悪夢が増えることがあります。成人してからは、女性の方が男性と比べて悪夢を報告する頻度は多いようです。

原因は?

上記のように、トラウマ(心的外傷)体験やストレスが悪夢の原因のひとつとして挙げられます。そもそもなぜ夢を見るのかという謎がありますが、一説には「記憶や情動体験の整理」と考えられています。だから、受け止めがたいストレスフルな出来事を体験した後は、それを整理しようとして夢の頻度が増えるのでしょう。

うつ病や統合失調症などの精神疾患のある人が、悪夢を見やすいということは知られています。精神疾患自体が大きなストレスや苦痛を生みますし、睡眠障害を伴うことも多いからです。また、精神医学には「悪夢障害(Nightmares Disorder)」という独立した診断もあります。

睡眠障害や、ある種の薬物の影響で悪夢が増えるということもあります(向精神薬の副作用など)。

悪夢への対処法

では、悪夢を見ないようにするにはどうすればいいのでしょうか?

PTSDやメンタルヘルスの問題のない人にも悪夢は体験されるものですし、睡眠や生活に特に支障がなければ、無理になくそうとしなくてもいいとも考えられます。

また、先にも書いたように夢を見ること自体が記憶の整理という働きをもっていると考えると、悪夢は心がストレスフルな体験を消化しようとしているのだととらえることができます。

統合失調症が良くなる過程で、ちょうど幻覚や妄想が減ってくるときに悪夢を見ることがあると中井久夫先生がどこかで書いておられました。幻覚などの精神病的なかたちで体験されていた未消化な心的内容が、だんだん心に収められていくプロセスと考えられるのだそうです。

また、ユングはある「戦争神経症」(現代のPTSDに該当します)の男性が見た夢について取り上げています。その男性は、砲弾が近くで爆発したことで戦争神経症を発症し、悪夢を頻繁に見るようになりました。

寝ている部屋の扉から、大きなライオンが入ってきて、何かが爆発し、男性は冷や汗をかいて飛び起きるという悪夢です。

夢の中の爆発は、実際に砲弾が爆発したことの再体験です。

ユングの治療を受けるなかで、男性の報告する夢はしだいに変化していきます。爆発は起こらなくなり、ライオンは徐々に扱いやすい小さな生き物に変わっていくのです(猫だったかな)。

これは、心がトラウマ体験を消化していく過程だと考えられます。だから無理に悪夢を消そうとしなくても、しだいに夢は変化していくということもあるのです。

けれどもなかなか夢が変わらず、悪夢で睡眠や生活が大きく損なわれるということもあります。

こうしたときには、まず睡眠環境を整えて、しっかりと眠れるようになることが重要でしょう。睡眠薬などの薬物療法が助けとなることもあります。

また、カウンセリングや心理療法で、ストレスの要因を取り除いたり、またトラウマ体験を扱っていくことが、結果として悪夢を減らすことにつながります。

心的外傷後の悪夢が、イメージ・リハーサル療法によって改善するという研究もあります()。

イメージ・リハーサルとは、悪夢をより望ましいストーリーに書き換えて、イメージの中でリハーサルするという手法です。たとえば、「怪物に追われて食べられてしまう夢」を、「怪物を退治する夢」に変えてイメージするのです。

 


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