社会不安障害のカウンセリング|神戸・芦屋・西宮
社会不安障害(SAD)とは
社会不安障害(Social Anxiety Disorder)あるいは社交恐怖(Social Phobia)とは、どのような病気でしょうか?
「人づきあいが怖い」「周りの人から悪く思われたらどうしよう」「イヤな奴と思われるんじゃないか」「また緊張して何も言えなくなって固まるんじゃないか」こういった思いから、人前に出るような状況で過剰に恐怖を感じてしまうような病気です。
もちろん誰だって人前に出るときに緊張したり、不安になったという経験はもっているでしょう。内気でシャイな人やあがり症の人はたくさんいます。ただ内気であがり症というだけで病的というわけではないのです。
社会不安障害とは、その緊張が極端になり、日常生活に多大な影響を与えている状態だと考えられます。
緊張や恐怖によって、人と関わる場面を避けるようになり、外出や仕事ができなくなることもあります。
人が多いところに出ると、動悸や発汗がひどくなり、お腹の調子が悪くなったり、あるいはパニック発作が起こることもあります。こうした身体的な不安症状があり、「慣れる」「だんんだん落ちつく」ということが少ないときに、社会不安障害と診断されることが多いでしょう。
社会不安障害は、西洋の精神医学から導入された言葉ですが、かつて日本で「対人恐怖症」などと呼ばれていた病気と、ある程度重なっていると思われます(今でもこちらの言葉のほうが分かりやすい人もいるでしょう)。「赤面恐怖」という呼び名もありました。
生涯有病率は3〜13%とかなり高いと言われています。
どんな場面で不安を感じるか
では、社会不安障害の人が強い不安を感じる状況とはどのような場面でしょうか?
「人前で電話をかける」
「公共の場所で食事をする」
「権威のある人と話をする」
「パーティに行く」
「人に見られながら字を書く」
「あまりよく知らない人たちと話し合う」
「まったく初対面の人と会う」
「人々の注目を浴びる」
「会議で意見を言う」
Liebowitz Social Anxiety Scale日本語版を参照しました。それぞれの項目について、「恐怖や不安をどの程度感じるか」「その状況をどの程度避けるか」を確認する尺度です。
こういった場面で、声や手が震えたり、頭が真っ白になる、顔が赤くなって汗が噴き出す、お腹がむかむかして吐きそうになるといった身体症状が現れます。
併発しやすい病気
社会不安障害の人は、このような強い不安を避けるために、人間関係や社会的な活動を避けようとします。不登校や引きこもりの人も、社会不安障害をもっていることが多いと思われます。
また、うつ病やパニック障害などの症状が併発しやすいことでも知られています。抑うつ的になり、「死にたい」と考える人の割合も多いと言われています。
同じ不安障害の仲間ということで、パニック障害と似ているのです。では違いは何でしょう? パニック障害は「私は死んじゃうんじゃないか」「頭がおかしくなってしまうのでは」といったことに対する不安ですが、社会不安障害は、他人や社交的な場面に対する強い不安や怖れが特徴です。
社会不安障害の治療
では、社会不安障害を克服するためにはどのようなことに取り組めばいいのでしょうか?
「精神科を受診する」ということも、社会不安障害の克服のための第一歩でしょう。「性格の問題だ」「私が悪いんだ」と自分を責めるのではなく、「社会不安障害という病気を治療しよう」と捉えることが大切です。
精神科では、薬物療法や医師による診断と精神療法が行なわれます。薬物療法ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が用いられることが多いようです。
「カウンセリングを受ける」という選択肢を選ぶ人もいると思います。研究では、認知行動療法や暴露療法などが効果があるということが確かめられています。日本では、対人恐怖症の治療として「森田療法」が試みられてきました。森田療法的なアプローチは、社会不安障害にも効果が大きいと考えられます。
また、特別な方法を使わなくても、「普通のカウンセリング」(支持的な心理療法)でもちゃんと効果はあると思われます。他者と関わることに大きな不安をもつ人が、カウンセラーという他人と何度も会ってプライベートなことを話すという状況自体が、不安への暴露療法的なはたらきを持っていると言えます。
カウンセリングについて
社会不安障害の人は、「誰もあなたのこと悪くなんて思ってないんだから、そんなの気にしすぎだよ」などと言われることが多く、「このつらさを分かってもらえない」と感じることがよくあります。
まずは、どんな状況でどのような不安を感じてこられたかを丁寧にうかがっていくことが大切だと思います。
そのうえで、社会不安障害を克服するために、カウンセラーと共同で取り組んでいけることについて話し合いをしていきます。
不安や恐怖を感じる状況を回避することで、社会生活が送りにくくなり、さらに他者や外の世界に対する不安が高まる、といった悪循環が起こっていることが多いので、まずはそれに気づいて抜け出す必要があります。
社会不安障害の人が、まったく人とつき合いたくないわけではなく、むしろ逆に、人間関係を強く求めていることだってあるのです。
「関わりたいけど、怖いから避けたい」
というどちらの気持ちもわかってほしいと言うかたもおられます。
不安は、まったくなくなるものではありません。
生きているかぎり、不確実なことはあるし、当然、そこに不安も生じてきます。
不安をまったく無くすことを目標にするのではなく、「上手に不安と関わる」「不安を手なずける」といったことを目指すのがいいと思います。
「やあ、不安くん、また出てきたね。こんにちは」なんて、ちょっとあいさつできるくらいのゆとりがもてるようになるといいのです。
「あるがままに不安を受容する」という森田療法の考え方が役に立つかもしれません。
「不安くん」を怖がったり、それに呑み込まれたりせず、観察できれば、
「もしかしてまた失敗するのでは」
「きっと嫌われるに違いない」
といった「思考」が、不安を大きくしているということに気づくでしょう。
自分の「思考」を吟味することができると、「どうも私はネガティブに考えがちだな」とか「絶対最悪の事態になるなんて、ずいぶん極端な考え方をしている」といったことが分かってきます。
そうすると、これまで避けていた状況や関係に、一歩踏み出す勇気ももてるでしょう。
社会不安障害の人は、「手が震えだした」「冷や汗が流れてる」「顔がこわばった」といったような自分の身体的な反応に注目しすぎて、周りが見えにくくなる傾向があります。この身体反応が「ふるえてるのがわかるのではないか」「こんなことで緊張していることがばれたらバカにされる」といった不安や思考と結びついて、不安にのみこまれて周りが見えなくなってしまうのです。
周囲の人をよく観察してみると、「よく見ると笑顔だし、別に私のことを嫌ってるってわけじゃなさそうだ」と気がつくこともあるでしょう。
そうじゃなくても、自分の身体(と不安・思考)ばかりにに注意を向けるのではなく(よけいに気になって不安がふくらみます)、周りの人の服装や、周囲にあるものや景色などに目を向けているほうがちゃんと現実にコンタクトできていると言えます。
身体的な反応も、緊張しているところだけでなく、「ではいま、身体で不快に感じていないところはどこかな」「地に足がついた感じを得るには、どう立ったらいいだろう」といったとことにも注意を向けてみてください。それからまた「震えている手」や「こわばった顔」を見ると、さっきより楽になっているかもしれません。
そして、想像上の不安ではなく、現実の人間関係のなかで、関わり方や自己表現のスキルを学んでいけると、怖れは少しずつ小さくなっていきます。
不安障害のカウンセリングについては、「パニック障害・不安障害のカウンセリング」もご覧ください。
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