ストレスと適応障害のカウンセリング

適応障害とは、ストレスとなる状況や出来事の影響によって、気分や行動面での症状が表れるような心の病気です。

「本当はこの仕事はしたくないし、向いていないと思うのに、しかたなくやっている。いつも憂うつで、身体もだるい」

「学校なんて行きたくないのに無理して登校していたが、しんどくて朝、起きれなくなった」

「部署が移動して、厳しい上司になってしまい、毎日叱責されるのがつらい。会社に行くと、頭痛やめまいが起こる」

「結婚後、夫の親と同居したが、姑とまったく合わず、心身の不調がひどくなった」

「育児のストレスで参っていて、眠れない」

いくつか例を挙げてみました。このように、環境にうまく適応できず、生活や人間関係のストレスによって、心身のさまざまな不調が表れます。

適応障害の症状

合わない環境に無理にいなくてはならなかったり、辛い体験をすると、誰でも不安や苛立ち、怒りなどを体験します。憂うつになったり、何もかも投げ出してしまいたくなることだってあるでしょう。

いじめやパワハラ、セクハラといった対人関係のストレスでも、同じような反応が出ます。

適応障害とは、こうしたストレスへの反応が強く出て、仕事や勉強、生活に支障をきたすような状態です。

人によって多様な反応を示すので、他の精神疾患のように「こういう症状があれば診断される」とはっきり定義しにくいところがあります。

ストレスへの反応としてよく見られる症状をいくつか挙げますが、どれもうつ病や心身症その他の病気でも認められる症状です。

ひとつひとつの症状だけでなく、本人と環境・ストレス要因の関係や、病気の経過を見ることが大切になるでしょう。

不安や抑うつ

不安感や焦燥感などが表れ、些細なことに過敏になります。自分に自信がなくなり、いろいろなことを心配するかもしれません。

また、気分の落ち込みや絶望感、無気力、涙もろさといった抑うつ症状が見られることもあります。うつ病と似ていますが、適応障害の場合は環境が変わってストレスがなくなると改善が早いのが一般的です。

抑うつ症状と関連して、「死にたい」といった希死念慮が表れることも考えられます。

身体症状

不安に伴って、吐き気や動悸などが出ることがあります。また、頭痛や腹痛、下痢、不眠(あるいは寝すぎ)、倦怠感、喘息、めまい、耳鳴りなど多彩な身体症状が出やすいのも特徴です。

問題行動

ストレスがたまるとイライラして、自暴自棄な行動に走りやすくなります。仕事に身が入らなくなり、無断欠勤をしたり、あるいは無謀な車の運転をする人もいます。また、過度な飲酒や、けんかなどの人間関係のトラブルが生じることもあります。不登校や出社拒否、家庭内暴力として表れることもあるでしょう。

電話が怖い、電車に乗れないといった不安障害に似た症状が見られることもあります。

適応障害の治療と改善

適応障害の克服や改善のためにできることは、「環境を調整する」「薬などの治療で心身の症状を治療する」「本人の適応力やストレス対処スキルを高める」といった3つの方法が考えられます。

ストレスの原因から離れる

適応障害とは、環境と本人の資質(性格や能力)のミスマッチによって起こってくる病気です。相談できる人や支援してくれる人がいない、孤立した状況では、症状は悪化しやすいでしょう。適切なサポートを受けながら、ストレスの原因となっている環境から離れることも回復のためには大切です。

薬物療法

精神科や心療内科を受診して適応障害と診断されると、環境調整や薬物療法、精神療法などの治療を受けることになるでしょう。

ただし、適応障害は「環境に適応できない」という病気なので、薬物療法は不安や抑うつといった症状に対する対処療法ということになると思われます。もちろん、お薬の助けで少し楽になり、ご本人がうまく環境に適応できるようになれば、薬物療法が大きな助けになったと言えるでしょう。

抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などが用いられることが一般的です。

適応力や対処スキルを高めるためのカウンセリング

根本的な回復のためには、適応力やストレス状況に対処するスキルを高めていくことも必要でしょう。課題となっているストレス状況を乗り越えることで、ストレス耐性が高まり、成長すると考えられるからです。

そのためには、カウンセリングやストレスマネジメントなどが役に立つでしょう。

自己主張が苦手で嫌と言えない、何事も悲観的にとらえすぎてしまう、自分の思った通りにならないと気が済まないといったご本人の性格傾向が、環境とのミスマッチを起していることもあります。適応障害となってカウンセリングを受けることが、自分自身をふりかえるきっかけになることもあるかもしれません。

「適応」ばかりが人生じゃない

上でも書いた「ストレスの原因から離れる」ということとも似ていますが、何も無理に「適応」するばかりが人生じゃないとも思うのです。

外向きの適応ばかりをがんばってきて、気がつくと自分の本心が分からなくなっていた、ということだってあるでしょう。

ずっと「いい子」で生きてきた人が、たとえば不登校や引きこもりになるといった「不適応」を起すことがあります。親や周りは、あの手この手を尽くして、なんとか「適応」させようとするかもしれません。

でも、本人にとってはこの「不適応」が、「いい子」を辞めて自分らしく生きるための精いっぱいの闘いだというとこも多いのです。

カウンセラーとしてこうした人たちに出会うときには、ただ症状がなくなることや外向きの適応だけを目指すのではなく、「不適応」の内面的な意味も見ていかなくてはいけないと思っています。

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