ストレスに強い性格「コミットメント」「コントロール」「チャレンジ」

寒い日が続いていますがいかがお過ごしでしょうか。

12月はなにかと忙しない時期です。

先日、「ストレスと性格」について話をする機会がありました。

ストレス反応を起こしやすい性格傾向としては、「タイプA行動パターン」が知られています。
アメリカの医師フリードマンが提唱したもので、競争心が強くてせっかちでアグレッシブな性格傾向を表しています。こうした性格傾向を持つ人は、いつでも戦闘モードになっているので、ストレス反応を起こしやすく、また心臓の病気にかかりやすいと言われています。

逆に、「ストレスに強い性格」についても研究されています。
Kobasa(1979)は、高いストレスの下でも健康でいられる人のもつ性格特徴として、コミットメント(commitment)、コントロール(control)、チャレンジ(challenge)の3つの要素があると考え、こうした特徴を「ストレス・ハーディネス(stress hardiness)」と呼んでいます。

コミットメントとは、自分の人生や課題、人間関係に深く関与しているという感覚です。
コントロールとは、直面している出来事や問題に自分がなんらかの影響を与えることができているという手ごたえのようなものです。
チャレンジという要素は、変化やハプニングを、脅威としてではなく、挑戦や成長の機会と捉えようとする態度を指しています。

ハーディネスを測定する尺度の項目をみると、次のような言葉が並んでいます。

「興奮したりわくわくすることが好き」

「努力すればどんなことでも自分の力でできる」

「計画を立てたら、それを実現させる自信がある」

「生きがいを感じているものがある」

などなど。

まあこうした質問にすべて「はい」と答えられる性格の人は、たいていのストレスは乗り越えられそうではありますが、個人的には「まるで少年ジャンプの主人公みたいで、ちょっと前向きすぎやしないかい」という印象も受けます(イライラしていないだけで、実はタイプAと似てるんじゃないかとか)。

普段、精神科の病院でも働いているのですが、しばらく前に病院の男性トイレに貼ってあった注意書きのことを思い出しました。
そこにはこんな言葉が書いてあったんです。

「一歩前へ。その積極性があなたの人生を変える」
「一歩踏み出せば何かが変わる」
「何事もチャレンジ精神 一歩前」
「一歩前へ なぜならそんなに長くない」
「男たるもの百発百中」
などなど。

トイレに行くたびにその注意書きを見て、「床が汚れて困るのは分かるけど、そこまで前向きさや男らしさを強調しなくったっていいんじゃないか」とちょっと文句を言いたくなりました。なんといっても精神科の病院なので、うつの方も来院されるし、それに性的マイノリティの方だって利用することだってあるわけです。うつ状態のときにこんな文章が目に入ったら、「踏み出せない俺はやっぱりダメだ」とさらに落ち込みそうではないですか。誰かが苦情を言ったからかどうかは分かりませんが 、その注意書きはしばらくして別のものに差し替えられました。よかった。

人生の課題に真正面から立ち向かっていくタイプの人もいれば、妥協したり、誰かに頼ったりしながらなんとかかんとか乗り越えていくタイプの人もいるわけです。

先日の「風邪の効用」についての記事とも重なりますが、適度な病気で休んだり、うっかり仕事を忘れたり(ときどきしでかします)、ときには意図的にサボったり、なんていうのも「ハーディネス」の一種なんじゃないでしょうか。(久)

 

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