養生とストレスマネジメント

しばらく前に、看護師さん対象にストレスマネジメントについてお話させていただく機会がありました。こちらにも覚え書き替わりに少しだけ書いてみます。

今日はクリスマスですが、ストレスに関するアメリカでのよく知られた研究ではこうした年中行事もけっこうなストレスになるのだそうです。

1967年のホームズとレイの調査では、「配偶者の死」のストレスを100点とすると、「離婚」が73点、「刑務所での服役」が63点、「結婚」は50点、「入学や卒業」は36点、「クリスマス」は12点と換算されるんだそうです。

結婚や卒業、クリスマスといった、一見楽しそうなことでもけっこうストレスになる場合があるということですね。

40年前のアメリカでの研究なので、もちろん時代や文化の差はあるでしょう。
クリスマスのストレスって、家族や親戚がたくさん集まってあいさつしたり、お年玉あげたりしなきゃいけない日本の正月に近いのかな、などといった想像が必要かもしれません。

また、大きなライフイベントよりも日常のあれこれのイライラの方がストレスとなることが多いとか、同じ出来事でも捉え方によってずいぶん違うだろうといった反論もあります。

そうした出来事に対する自分の対処(ストレスコーピングといいます)が、どれくらいうまくいっているかということも「ストレスと感じるかどうか」にかなり影響しています。

とはいえ、ストレスは「間があく」ほうがいいのは確かなので、何か大きな出来事があった後はできるだけひっそりと暮らすのがよさそうです。

人生、良いことも悪いこともあるし、良いことだってストレスになります。
悪いと感じたことだって、ひょっとすると何かを学ぶきっかけになるかもしれません。
だから、ストレスをなくそうとするのではなくて、「上手におつき合いする」のがいいのでしょう。

ストレスと上手につき合うコツは、たぶんほどよく「わがまま」になることだと思います。
「こうしなきゃいけない」「そんなことしてはダメ」といった外からの声ではなくて、自分がどうしたいか、どうしたら気分いいかをちゃんと感じることが大切です。

けれども、しんどいときにはなかなか自分の内側の声を聞くのは難しいのも確かです。
安心できる場や関係で、ちょっと肩の力を抜いて、ほっと息をついて初めて「本当はどうしたいか」を感じることができるようです。

あんまり過激に「本当にしたいこと」を追求するのも人生を大きく変えてしまうので、できれば「ちょっとした気晴らしや息抜き」だとか「試しにやってみた」とか、「密かな楽しみ」くらいを求めるのがいいような気もします。そういうのがたくさんある方が、ストレスに対する柔軟性は養われるんじゃないでしょうか。過激なことよりは、なんでもほどほどがいい。

なんていうお話をしたのですが、「ストレスマネジメント」について今の心理学が言っていることって、江戸時代に書かれた貝原益軒の『養生訓』に書かれていることとあまり違いはないんじゃないかとも思いました。

「食べる、寝る、しゃべる」は多くの人がしているストレス解消法ですが、それも「ほどほど」が良いということだとか、ときどき「肩を上げてストンと抜く」リラクセーション法だとか、呼吸法やタッピングのようなことも記されています。

ハンス・セリエはストレスを「外部環境からの刺激によって起こる歪みに対する非特異的反応」と定義しました。
「非特異的」というくらいだから、時代や環境が変わっても、人間の身体の反応はあまり変わらないので、ストレスへの対処法も大差はないのかもしれません。

というわけで、年末年始、ほどほどに食べたり寝たり、しゃべったりしながら、ぼちぼち気晴らしもしつつ過ごしたいと思います。(久)

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