神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士
神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士

フラッシュバックへの対処法

 

精神科の病院でも臨床心理士として仕事をしているのですが、そこでPTSDなどのトラウマ症状に悩まされる人と会うことがあります。双極性障害などの精神病圏の患者さんのなかにも、成育史におけるトラウマ体験が大きな影響を与えていると思われる方がおられます。

フラッシュバックに悩まされている患者さんに伝えている対処法をまとめました。

 

フラッシュバックとは?

フラッシュバックとは、過去のトラウマ体験が非常に生々しく思い出されるような症状です(1)。「思い出す」というよりは、「今まさに同じ出来事が起こっているかのように再体験する」と言ったほうが正確でしょう。

凍りついていたトラウマの記憶が溶け出して、そのときの感情や感覚、考えなどが鮮明によみがえります。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害に特徴的な症状です。事故や災害、犯罪被害、あるいはいじめやDVなどの体験がトラウマとなって、のちにフラッシュバックを引き起こすことがあります(2)。

 

トラウマと解離

トラウマとは、「言葉にならない」「筋道立てて語るのが難しい」といった体験です。それは通常の記憶とは異なるかたちで心に「冷凍」されてしまいます。専門的な用語では「解離」と呼ばれるのですが、これはあまりに辛い出来事を心から切り離すことで、なんとか安定を保とうとする試みなのです。

フラッシュバックは、解離されていた感覚や感情、思考などの再体験です。

 

フラッシュバックの症状

フラッシュバックとはトラウマの再体験なので、恐怖や混乱・不安などの心理的な症状だけでなく、心拍数の増加や過呼吸などの身体反応も現れます。涙を流したり、急に動けなくなってしまう、無表情になるといった反応が見られることもあります。

ショックを受けるような出来事に遭遇したとき、生きものは「闘争」「逃走」「固まる」といった反応を示します(Fight,Flighr,Freezeの3つのF反応と呼ばれています)。

フラッシュバックのときにも、同じような反応が見られるのです。

たとえば、映画『ランボー』で、シルベスター・スタローンが演じるベトナム帰還兵のランボーは保安官の取り調べが引き金となってフラッシュバックを起し、「闘争」「逃走」反応を示しました。

 

悪夢との関連

ある調査によると、7~8%くらいの人たちが一か月のあいだに「恐ろしい夢で目が覚める」という体験を報告します。しかし、PTSDを発症している場合は50%以上の人が悪夢を見るといいます。

トラウマ体験後の悪夢も、フラッシュバックと同じく再体験の症状です。睡眠中に起きるフラッシュバックが、悪夢だと考えることもできるでしょう(3)。

 

フラッシュバックへの対処法

では、フラッシュバックが起きそうなとき、あるいはフラッシュバックを起してしまったときに、どのように対処すればいいでしょうか。

フラッシュバックを起しそうになると、多くの人は怖くて目をつぶってしまいがちです。しかし、目を閉じると過去のトラウマ記憶がさらに生々しくよみがえってしまいます。「今ここ」の目の前の現実とのコンタクトが弱くなるためです。

だから、しっかりと目を開けて、周りに見えるものをひとつずつ確認していってください。見えるもの、聞こえるものを言葉に出して、今の安全を確かめていくこともできます。

「今私は自分の部屋にいる。窓が見える。カレンダーが見える。時計の音が聞こえる。ここは安全だ」といった感じです。

フラッシュバックを起したときには、「これはフラッシュバックだ。現実じゃない。今は〇月〇日で、ここは私の部屋だ。今は安全な場所にいる」と言葉にしてください。

そして、あなたにとって安心だと感じられるものを探してください。好きな写真や絵でもいいですし、ぬいぐるみを抱くと安心する人もいます。

また、呼吸や身体感覚に注意を向けることで、過去のトラウマ記憶から「今ここ」に意識を置くことができます。最初は呼吸が浅い(あるいは早い)かもしれません。無理に深くしようとしなくてもいいので、そのときのありのままの息の出入りに注意を向けてください。このように、「今この瞬間」の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れることを「マインドフルネス」と言います。これは、少し練習が必要ですので、フラッシュバックを起していないときに、何度か体験してみるといいでしょう(「溺れているときに水泳の練習はできない」ので、安全で落ち着いているときに体験しておくのがいいのです)。

 

周囲の人のかかわり方

家族や友人、知り合いがフラッシュバックを起したときにはどうかかわるといいでしょうか。

基本的には、その人を脅かさないようにしながら、フラッシュバックが収まるのを待ちます。慌てず落ちついて、その人がゆっくりと今ここの現実に戻ってくるのを手助けしてあげてください。

過呼吸を起しているときには、息を吐くことに意識を向けてもらいます。苦しいからどうしても息を吸いたくなるのですが、「大丈夫、ゆっくりと息を吐けば、自然と空気は入ってくるから」と伝えてあげてください。

落ちついてきたら、周りを見回してもらったり、場所や日付などを確認する手助けをします。

手を握ったり、背中をさすってあげることで、安心して現実にコンタクトしやすくなる人もいます(触れられると混乱する人もいるので、注意は必要です)。

少し動けるようになったら、歩いてみたり、足踏みをしたり、あるいは軽く踵を上げてすとんと地面に落として、大地に足が着いていることを確かめると、より現実に戻ってきやすいと思います(足元に注意して)。グラウンディングという方法です。

 

【註】

(1)フラッシュバック(Flashback)とは、もともとは映画の手法のひとつで、短い間隔で異なる場面のシーンを切り替えるものです(クロスカッティングとも言います)。

(2)悪夢とPTSD(トラウマ)

(3)PTSD(心的外傷後ストレス障害)とカウンセリング

 


Scroll Up