神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士
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自分を大切にできない人間関係

自尊心や自己肯定感を支えているのは、身近な人たちとの関係性です。「認められている」「尊重されている」「愛されている」といった実感が得られて初めて、自分を好きになったり、大切にすることもできるのです。

自己肯定感が低い人は、しばしば自分を大切にできない人間関係に絡め取られていることがあります。

大切にできない、されないだけでなく、自分が傷つくような相手との関係性から逃れられないのです。

自分を大切にできない、傷つけられる関係性が、親子や恋人、友人との間で繰り返されると、自己肯定感が低下します。それは、リストカットなどの自傷行為や過食・拒食、物質や恋愛などへの過度の依存といったことにも結びつきます。

精神科医の松本俊彦先生は、「自分を傷つける関係性」として次の3つを挙げています(1)。

否定される関係性

「いくらがんばっても認めてもらえない」「暴言や暴力をふるわれる」「モラルハラスメントがひどい」「不倫や浮気などで、自分を大切にしてもらえない。愛してもらえない」

こういった人間関係が否定される関係性です。あなたを否定する人との関係が続いていると、「消えたい」「いなくなりたい」「自分は必要とされていない」といった自己否定も強くなります。

支配される関係性

自分の意見や自由を認めてもらえず、服従や屈服を強いられるような関わりが、支配される関係性です。

相手の嫉妬や束縛によって身動きが取れなくなります。必ずしも否定的な言動によって支配するとは限りません。「君のためを思って」「あなたの将来のために」といった「善意」で、支配されることだってあるのです。

また「いつ相手を怒らせるか」「見捨てられてしまうのでは」といった恐怖によって、コントロールされることもあります。そうなると、常に相手の顔色をうかがって、ビクビクして生活するようになります。

本当のことを言えない関係性

否定される、支配される関係の中では、自分の「ありのままの気持ち」を表現することは困難です。

「本当の気持ちを伝えたら嫌われるのでは」

「嫌だと言うと相手を怒らせてしまう」

といったことから、自分の気持ちを抑えることが癖になってしまいます。

すると、「私は本当はどう感じていて、どうしたいのか」ということが分からなくなってしまうのです。

「自分がどう感じているのか」は、世界の中の「現在地点」のようなものです。

それが分からないと、自分がどのような状態なのか、どこへ向かっているのかといったことも見えなくなります。

自分を大切にするには

「否定される関係性」「支配される関係性」「本当のことを言えない関係性」に絡め取られている人は、自分よりも相手の気持ちや意向を重視して生きてきたと思われます。

「私さえがまんすれば、この場はうまく収まる」

「気持ちを抑えて従っていれば、ぶつかることはない」

といった人間関係の「ルール」が身についているのでしょう。これは、常に「アウェイで」戦っているようなものです。

では、どうすれば自分を大切にした人間関係を築き、自己肯定感や自尊心を育むことができるようになるのでしょうか。

孤立しない

自分を大切にできない人間関係にとらわれてしまうと、どうしても孤立しがちです。DVやモラハラ、いじめなどの関係性もまた、被害者を孤立無縁にさせがちです。

「どうせ嫌われるに違いない」

「人と関わるのが怖い」

と感じるのももっともです。でも、孤立してしまうといっそう人との壁が高くなってしまいます。公園や山道を散歩して通りすがりの人に「こんにちは」とあいさつするだけでもいいと思います。野良猫や鳩と触れ合うくらいからでもいいのです。

信頼できる人に相談する

あなたにとって「安全」で「信頼できる」と感じられる人が見つかれば、その人に相談してみてください。

これまで「私がなんとかすればいい」「自分ががまんすればいい」と一人で抱えてきたのかもしれませんが、勇気を出して人に頼ってみることで、これまでの人間関係や生き方の「ルール」がより生きやすい方向へと変化することもあります。

安全な場所を見つける

あなたが自分自身でいられる、誰にも邪魔されない安全な場所を探しましょう。部屋の片隅にそういうコーナーを作ってもいいですし、お気に入りの公園や図書館の椅子などを見つけてもいいでしょう。

自分の気持ちを感じてみる

安全な場所が見つかったら、「本当のところ、私は何を感じているのかな」と自分自身に問いかけてみてください。

ずっと気持ちを抑えて生きてきた人にとっては、「本当の気持ち」を探るのは難しいかもしれません。

まずは身体の感覚に意識を向けて、気になるところに「こんにちは」とあいさつをしてみてください。言葉になる以前の体の感覚に触れていると、「ぴったりくる表現」が見つかることがあります。また、感じているうちに感覚が変化することもあります。その感覚が「何を伝えたがっているのか」「何を言いたいのか」を時間をかけて探ってみてください。これは、フォーカシングと呼ばれる方法です。

自他の境界をはっきりさせる

「相手の意にそうように」「嫌われないように」行動するのではなく、「自分の責任で、手の届く範囲のことをやる」「相手がどう反応しようが、それは引き受けない」というように「自他の境界を明確にする」練習も必要です。

ゲシュタルト療法を創始したフリッツ・パールズの「ゲシュタルトの祈り」が役にたつかもしれません。

私は私のことをする

あなたはあなたのことをする

私はあなたの期待に応えるためにこの世にいるのではない

あなたは私の期待に応えるためにこの世にいるのではない

それでもし縁あって私たちが出会えるなら、それはすばらしいことだ

出会えないなら、しかたない

「安全な場所を見つける」というワークも、自他の境界を明確にするための方法の一つです。

トラウマなどで身体的な境界感覚が損なわれている人には、身体を動かしたり、実際に手で自分の「ナワバリ」「テリトリー」を表現してもらうこともあります。「間合い」や「自分の中心」を感じる武道のエクササイズが効果的だと感じています。

自己主張(アサーション)のスキルを身につける

アサーション(assertion)とは、「主張」とか「断言」を意味する言葉です(2)。だからといって自分の意見を相手に押しつけるものではなく、自分も相手も大切にした表現方法です。

嫌なことや負担になることは、上手に断ったり、してほしいことをちゃんとお願いするといったコミュニケーションのスキルですね。

こうしたスキルが身につくと、相手に振り回されにくくなります。

(1)松本俊彦『自分を傷つけずにはいられないー自傷から回復するためのヒント』講談社、2015年

(2)平木典子『図解 自分の気持ちをきちんと「伝える」技術―人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ』PHP研究所、2007年


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