カウンセリング 神戸・芦屋・西宮 臨床心理士・公認心理師|かささぎ心理相談室
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統合失調症の治療・カウンセラーの役割

単科の精神病院に勤めて20数年になります。心裡士として、そこで多くの統合失調症の患者さんやご家族と出会ってきました。
現在の統合失調症の治療の中心は、薬物療法です。また、急性期には入院が必要とされることも多いでしょう(実際には、急性期だけでなく、慢性期の患者さんや社会的入院ともいえる方が長期間入院しており、今の日本の精神医療の問題点のひとつです)。
臨床心理士(最近では公認心理師)として統合失調症の方に関わる機会は、次のような場面です。

心理検査・アセスメント

外来、もしくは入院の患者さんに心理テストを実施して、病態や認知機能などのアセスメントを行います。
よく実施したのは、ウェクスラーの知能検査(WAIS)や、バウムテスト、ロールシャッハテストなどです。MMPIなどもたまにします。
ロールシャッハテストは、「精神病圏かどうか微妙な人」の鑑別のためにオーダーされることが多かったのですが、この頃は依頼されることが少し減ったようです。その人の体験世界のありようや、関わり方、身の守り方などを推測するにあたって、得られることの多いテストなので、使用頻度が減っているとしたらちょっと残念です。

そういえば昔、Dr.から「この患者さんが本当に霊に憑りつかれているのか、それとも病気なのかを心理テストで探って」と言われて、「れ、霊のことはわかりません」と困ったことがあったのを思い出しました。

カウンセリング

主治医が役に立つと判断すれば、カウンセリングを行うこともあります。急性期の症状が治まっており、日常生活をぼちぼち送ることはできていても、家族関係やその他のことで困り事、悩み事があるときに紹介されることが多いかと思います。
統合失調症の方は、不安なことが重なると幻聴が聴こえてきたり、妄想的に受け取ることも増えますが、そんなときに丁寧に話を聞いて、その人のリソースや安心できることを確かめ、具体的な対処を検討するといったことで、落ち着くことも多いんです。昔習った精神医学の教科書的には、「幻聴や妄想にカウンセリングは効果がない。話を聴くのはむしろ逆効果」といったことが書かれていましたが、統合失調症が軽傷化したからなのか、薬物療法のサポートが強力だからなのか、対話によって安心が得られると、陽性症状が軽減することもよく見られます。この頃、人気のある「オープンダイアローグ」も、そんなことを言っていますよね。

デイケアなどでのグループ活動

勤めている病院にデイケアが新設された際に、どさくさに紛れて(?)「カウンセリングの部屋もあるといいですよね」と訴えて面接室をもらいました。それまでは、病院の空いている診察室や、理事長室などを借りてカウンセリングをしていました。いつも同じ部屋を使えるとは限らないし、急に理事長が入ってきて慌てることもありましたので、面接室ができてずいぶん構造が安定しました。こうした経緯があるので、「デイケアの居候」として少しでもお役にたちたいと、グループ活動を担当していた時期がけっこう長くあります。

グループ活動では、主に統合失調症の人たちを対象に、さまざまな活動をしてきました。ミーティングで「今月したいこと」を話し合います。「タコ焼き」「お好み焼き」などの調理は定番で、人気のあるものでした。パンを焼いたり、ガトーショコラを作ったり(!)したこともあります。男性グループで「逆バレンタインで、作ったチョコレートを女性にあげてみる」なんてことをしたり(ソーシャル・スキル・トレーニングになったかも)。
調理以外にも、夏には水鉄砲で合戦をしたり、ハンモックを吊って昼寝をしたり、野点でお茶を飲んで連句をつくる、なんていうちょっと文化的なことをして遊んだりしました。演劇っぽいことや、映画作りをしたこともあります(iPhoneだけで、撮影から編集まで、けっこうできちゃうものですね)。

もちろん、もうちょっと真面目にSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)や心理教育、当事者研究などをすることもありました。どっちかというと、遊んでいる方が、メンバーさんも楽しいし、得るものも大きいような気がしますけれど。

家族心理教育グループ

統合失調症の患者さんのご家族を対象とした心理教育グループを長く担当していました。
「標準版家族心理教育」というプログラムで、ご家族の困り事、悩み事などをグループで話し合うといったことをしてきました。
心理教育と情報提供を行う講義
チェックイン
取り上げたい困りごとの提示
今日のテーマを選ぶ
そのテーマについて質問をし、詳細を共有する
アイデアや工夫などを提案する
やれそうなこと、試みてみたいことを選ぶ
メンバーからの一言メッセージ
といったように、しっかりとセッションが構造化されているので、参加者も安心して話しやすいのではないかと思っています。

統合失調症の精神療法・認知療法

統合失調症の治療 理解・援助・予防の新たな視点』原田誠一著、金剛出版、2006年

この本は、統合失調症の精神療法や予防などがテーマになっています。精神病院での仕事に参考になるところがたくさんあるので、ここでも少し紹介しておきます。

著者がある統合失調症の方のご家族から受け取ったという手紙が紹介されています。

「今の精神科の治療では当事者や家族がおきざりになり、病気や治療方針の説明がなされないまま漫然とクスリを飲み続け、ただなんとなく通院している人が多いように思います。
 他の体の病気のように病気や症状の仕組・意味を理解させ、病気がよくなるために病人と家族が自分たちも工夫できるよう、なぜ精神科のお医者さんは指導しないのか、もどかしく感じております」

同じような言葉を、家族心理教育グループでご家族から聞いたこともあります。

これは、薬物療法(と入院)中心だった日本の精神医療の課題なのだと思います。
僕が精神病院の心理士として働き始めた25年前と比べると、グループホームや作業所、訪問看護など、地域での生活をサポートする支援も増えてきましたし、オープンダイアローグのような対話によるケアにも注目が集まってきました。

「病気や症状の仕組・意味を理解」し、「病人と家族が自分たちも工夫できる」ようになると、たとえば幻聴(正体不明の声)などの影響力も弱まり、混乱せずに落ち着いた対処行動ができるようになります。

この本でも紹介されている
「正体不明の声 ハンドブック」
http://www.ar-pb.com/files/s_handbook.pdf

には、
「正体不明の声が聞こえる」ことは、①不安、②孤立、③過労、
④不眠が重なって、しばらくの間続くときにしばしばみられる現
象で、そう稀なことではありません。
例えば、山や海で遭難した人の手記をを読むと、「正体不明の声」
が聞こえる体験がよく出てきます。遭難した人は、不安で孤立し
ています。疲れきっていてもぐっすりとは眠れない状態で、まさ
にこれら4つの条件にさらされます。

と書かれています。
こうしたことを知っておくと、心配事を相談したり、無理をせずに休んだり、眠りが改善するように工夫することも可能になります。

カウンセラーとして統合失調症の方にお会いするときにも、上記のことをわかりやすく何度もお伝えしたり、「正体不明の声は気にしないようにする」「信頼できる人に相談する」「楽しい活動をする」「よく休む」といった、その人にあった対処法をいっしょに検討していくことを心がけています。

統合失調症を初めとした精神病圏の、病態の重い方とのカウンセリングでは、「覆いを取る」ようなアプローチはかえって混乱を深めてしまいがちなので、困り事がより整理されて見通しが持てて、具体的な対処法が見つかることが望ましいと思います。