あくび考

あくびとリラクセーション

春先になると陽気のせいか、あくびがよく出ませんか。

人前であくびをするなんて失礼だとぐっとこらえることもあります。
でもあくびって、心と身体の緊張がゆるんでリラックスできるし、頭もかえってしゃきっとするとてもいい方法です。
緊張が強い人には、一種のリラクセーションや呼吸法として、「あくひの仕方」を教えることもあります。

あくびは疲れているときや眠たいとき、寝起きや退屈なときに自然に生じる現象です。ほ乳類以外にも亀や鳥などもあくびをするそうで、発生学的にはかなり古い行動だと考えられています。

そういえば、犬や猫のあくびが伝染することってありますよね。なぜあくびが伝染するのかについては諸説あるようです。研究によれば(ちゃんと研究している人がいるのです)、4歳くらいまではあくびは伝染しないそうです。こうしたことから、あくびは他者の心の状態を推測する「心の理論」や「共感性」と関連していると考えられているようです。

あくびの映像を見たり、あくびについて書いてある文章を読むだけでもうつるということなので、今これを読んでおられる皆さんもそろそろむずむずしてきたころかもしれません。

あくび指南

落語の「あくび指南」にもありますが、どうせあくびをするなら無意識にではなく(そういうあくびは駄あくびと呼ばれています)、ちょっと意識的に行ないたいものです。「あくび指南」には、名月を見上げての秋のあくび、コタツから出た猫ののびにつられての冬のあくびなど、いくつもの風流なあくびが取り上げられています。

こうしたあくびは「上級編」ですが、わりと簡単に(?)できるあくびのコツを挙げておきましょう。

まず、肩をきゅっと上げてすとんと脱力したり、首をゆっくりと回して緊張をほぐしてください。
あれやこれやの悩みごとはとりあえず横に置いておいて、頭をからっぽにするのがいいようです。
ふっと息を吐いて少し上を向いて口を開きます。

このとき喉の奥を意識するのがコツです。ヨーガでも、喉のチャクラがあるとされる場所ですね。

うまくあくびができると、「あくび音」といっていいのか(正式名称があるのでしょうか)、独特の感覚と音が前身に広がっていき、眉間や頭頂から気持ちがのびていきます。

じんわりと涙がにじむかもしれません。「あー」と声を出しながら、両手をいっしょにあげてのびをすると、あくび感覚を全身で味わうことができます。

不思議とあくびをしている数秒間は、まわりの物音はほとんど聞こえなくなるし、気がかりなことから少しだけ自由になることができます。あくびの最中は、「いま、ここ here & now」に意識が向くからでしょうか。

うまくできないときにはYouTubeなどで”あくび猫”と検索するとたくさんの映像がでてきますので、それを見て「あくびをうつす」のもいいかもしれません。「いま、ここ」に生きる猫はあくびのいい師匠になります。あくびの後も、できるだけ猫的にごろごろするとリラックス効果が高まるようです。

あくびと魂

『枕草子』の「すざまじきもの」という段に、物の気(物の怪)を患った者の治療のために僧侶が加持祈祷をするという話があります。あれこれとがんばって払おうとするのだけれど、なんの効き目もないので僧侶はついにおおあくびして寝てしまいます。言い伝えでは物の気が治るときに病人があくびをするのが本当とのことです。この話は、「病人じゃなくて僧侶があくびをしてしまった」ということを皮肉っているのだそう。

ともあれ、身体がゆるむとあくびとともに何か悪いモノが出ていくという発想は、世界各地にあるようです。「あくびをすると魂が抜けてしまう」ので手で口を押さえなきゃいけない、なんていう文化もあるようですけれど。

少し疲れがたまっているかな、緊張しているかな、というときには一度「あくび」を試してみるのもいいかもしれません。ただし、おおあくびで顎が外れないように気をつけてくださいね。

夜遅くにこんな馬鹿話におつきあいいただき、どうもありがとうございました。
え? 退屈であくびが出たって?
なかなか上手なあくびじゃあないですか。

*逆にあくびが出過ぎて止まらない、というときには脳や身体の病気が関係していることがあるそうですので、専門医を受診してください。

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