カップルセラピーをオンラインで実施してみたら効果はどうなの?という研究

今日も空き時間に、臨床心理学の海外論文をアブストラクトだけ読みます。目指せ三日坊主。

Couples Therapy Delivered Through Videoconferencing: Effects on Relationship Outcomes, Mental Health and the Therapeutic Alliance

by Andrea Kysely

Frontiers in Psychology | New and Recent Articles / 2022-02-04 2:47 PM

ビデオ会議を通じて提供されるカップル・セラピー。関係性の成果,精神的健康,治療同盟に対する効果

昨夜はZoomを使ってオンラインでロールシャッハの研究会をしました。

新型コロナウイルスの拡大は、カウンセリングや心理療法、学会や研究会などの方法にも大きく影響を与えてきました。

かささぎ心理相談室でも、ここ数年、電話やオンラインでのセッションを行ってきました。

個人的には、対面の方が関わりやすいと感じますし、Zoomも長い時間だと疲れるのですが、実際、オンライン・セラピーと対面のセラピーでは、効果にどのような違いがあるのでしょうか?

という研究を、カップル・セラピーについて行った論文ですね。

参加者は30組60名のカップルで、年齢は21歳から69歳、交際期間は1年から49年だったとのこと。ランダムに対面とビデオ会議のグループに振り分けられ、6セッションのマニュアル化されたカップル・セラピーを受けました。

それぞれのカップルは、事前、事後、3ヶ月後フォローアップ時に質問紙に答えています。

その結果、治療同盟、関係満足度、精神的健康その他すべてが改善し、対面のグループとオンラインのグループに違いはなかったとのことです。

開業カウンセリングって、基本的には街の病院とか美容室のようなローカル・ビジネスで、「あんまり遠いと通いにくいよな」(かといってすぐ近所でも行きにくい)という生業だと思っているのですが、テクノロジーの発展によって「どこにいても」カウンセリングを受けることのできる時代になってきたようです。

いずれはメタバースでアバターを使ってカウンセリングを受ける、なんていうことになりそうです。あるいは人々はAIカウンセラーに相談するようになって、常時、気分や反応をモニタリングされるという世界になるのか。学校も会社もメタバースで、そのうち「家族もオンラインでいいんじゃない?」っていうディストピアが迫っているのかも。

そうなると、みんなAmazonで本を買うようになって街の本屋が潰れるというのと似て、資本力のある大手のオンライン・カウンセリングの会社などが一人勝ちするんじゃないか、と心配にもなります。

でもコロナ禍でオンライン会議やテレワークが進む一方で、(ソロ)キャンプが流行ったことなどを考えてみると、便利になるばかりが進歩ではなさそうです。

キャンプなんて言ってみれば、わざわざ不便な生活をしに山奥に出かけるわけで、その不便さの中に「体験」が生まれるということですよね。

『おやじキャンプ飯』、面白いですよね。

カウンセリングのために電車に乗ったり、移動している間に「今日はどんなことを話そう」と考えをめぐらす時間がいい、と言う方もいます。

「オンラインだと終わり際がパチンと切れてしまうようで、急に孤独になる」という体験をする人も多いんじゃないでしょうか。

わざわざ移動して、玄関を開けて挨拶して、生身の人間と対話して、最後にまた挨拶をして、といった「めんどくささ」が生み出す体験にも意味があるように思います。

壊れて流れ続けるトイレの水の音も、森の中の清流のせせらぎと思えば、キャンプ気分が味わえるのかもしれない。

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