薬に頼らないうつ病の改善、運動療法について
うつの8割に薬は無意味
井原裕先生の『うつの8割に薬は無意味』(朝日新書)という本を読むと、「抗うつ薬が本当に効くのは、うつ全体のわずか2割」といった、ちょっと驚きなことが書かれていました。
医局のドクターに「これって本当ですか?」と尋ねてみたら、「まあ、そんなところだと思いますよ」という答えが返ってきたので、「そうなのか」と思った次第です。
Sportsnaviを見てみると、セ・リーグ1位の広島のチーム打率が2.74、5位の阪神は2.45とあるので、「まあ、そんなところ」なのかとちょっと納得しました。野球と同じで、うつ病の治療も何打席かはチャンスがあるわけで、その中でお医者さんは「この人に効く抗うつ薬」を探していくし、精神療法や環境調整で支えていくのです。
本の内容を簡単に紹介してみます。
抗うつ薬は2割くらいの人にしか効かないことは精神科医はよく知っているが、「2割効くなら使うべき」派が大多数。製薬会社によって「心の風邪」といったうつ病の啓発活動がさかんに行なわれたが、SSRIなどの抗うつ薬は軽症のうつ病に対してはプラセボよりも優れた効果は示さない、という結果が出た。薬物療法をまったく否定することはナンセンスだが、薬は万能でもない。自分自身のために何ができるかを考えて、行なうことが大切。
大雑把にまとめると、こんな内容だったと記憶しています。
病院でうつの方のカウンセリングをするときには、とくに休息の時期を抜けつつある方には、「薬の力は半分、後の半分はあなた自身ですよ」とお伝えすることもあります。
じゃあ自助努力の半分は、何をしたらいいのでしょう?
睡眠をしっかり取る、アルコールを控えるといったような生活習慣の改善に加えて、「運動」が効果があるというインフォグラフィックを見かけました。
薬なしのうつ病との戦い方
「薬なしのうつ病との戦い方」というインフォグラフィックです。
Source: BestCounselingDegrees.net
アメリカ人の10人に1人が抗うつ薬を服用しているそうです。
でも抗うつ薬の他にもうつと戦う方法はあるよということで、「運動(エクササイズ)」が勧められています。
- 定期的な運動は中度から軽度のうつの人の気分を改善させることができる。
- 運動は重篤なうつ病の人の助けにもなりうる。
とのことです。
研究では、
- 有酸素運動
- 抗うつ薬の投与
- 有酸素運動+抗うつ薬の投与
という3つのグループが比較されたとのことです。
16週間後、3グループいずれも65%の人にはもはやうつ病は認められませんでした。
というわけで、運動も抗うつ薬も同じくらい効果があるとの結果が紹介されています。それに、運動の効果の方が長持ちするのだそうですよ。
どんな運動がうつ病の改善に効果があるのか?
では、うつ病と戦うためにもっとも効果的なのは、どのような種類の運動なのでしょうか?
「ランナーズハイ」になるくらいに運動すると、エンドルフィンが分泌されて、悦びが増え、苦痛が減るとあります。そして、気分を改善させてくれるのだそうです。
他にも、ウエイトトレーニングやヨガ、ハイキングなども、うつの改善に効果があるとのことでした。
ボルダリング(ロッククライミング)が特にうつにいいという研究結果を読んだ記憶もあります。
とはいえ、うつのときに「運動」をするなんてかなり困難なのも事実です。
「身体が鉛のように重くて、指一本動かすのもしんどい」ので日常生活もままならないというときに、運動なんてとても無理でしょう。
まずはお薬を飲んで、しっかりと休養することが大切です。薬については、主治医に遠慮せずに、効果や副作用について詳しく伝えたり、尋ねたりしてください。
そのうえで、少しでもゆとりができたら、「ちょっとだけ散歩してみる」「ストレッチくらいなら」「ラジオ体操でもやってみようか」といったあたりから、運動に取り組むことができるといいのではないでしょうか。
「運動しなくてはいけない」「すべきだ」
ではなく、
「ちょっと動いてみたいな」
と感じたころに、試してみるというのがいいと思います。
大切なのは「習慣」にすることです。
運動が習慣になると、うつの予防にも効果があるでしょう。
といったことを書きながら、「最近、運動してないなあ」と反省してます。
よろしければうつ病とカウンセリングもお読み下さい。
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