神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士
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落ち込んだときはテディベアに触れてみよう

あたたかい手と冷たい手」でも取り上げた『触楽入門』という本から、また別の研究を紹介します。

孤立感を感じたときはテディベアに触れてみる

ひとつは思いやりの社会学について研究しているジェイ・ナラヤン博士らが行った研究です。

テディベアに触れることで、孤独や疎外感が癒されると考えて、次のような実験を行いました。

被験者たちは性格診断テストを受けます。

その後、テスト結果に基づいたふりをして、一つのグループの人々には「将来、あなたは社会から認められる」、もう一つのグループには「将来、あなたは孤立してしまう」と伝えるのです。

それから、テディベアを被験者たちの前に置き、これにいくら払えるかを聞くのですが、そのときにテディベアを見るだけのグループと、触ることができるグループというふうにさらに2通りに分けました。

さて、どうなると思いますか?

こんな結果だったそうです。

「社会から認められる」と言われたグループでは、テディベアに触っても触らなくても、支払いたいと考える金額に差は認められませんでした。

一方で、「孤立するだろう」と伝えられた人たちは、テディベアに触れた被験者のほうが、金額を高く設定したのです。

「孤立する」と言われて急に自信がなくなって、不安が高まった人にとって、テディベアの肌触りが救いになったのだと考察されていました。

触れられることで死への恐怖がやわらぐ

もうひとつ別の研究も紹介されていました。

アイリス・シュナイダー博士らによる、触覚的な接触が死への恐怖を和らげることができるかどうかという実験です。

被験者には死への恐怖についての7つの質問(「死はすべての終わりなので、死ぬことは怖いと感じる」など)を行うのですが、そのアンケートを渡す際に肩に少しだけ触れるグループと、触れないグループに分けたのだそうです。被験者は同時に自尊心(セルフエスティーム、自己評価)を測る質問紙にも回答しました。

その結果、自尊心が低い被験者は、肩に少し触れられることで、死に対する恐怖が有意に和らぐことが明らかになりました(自尊心が高い被験者は、触れられるかどうかによる変化は見られませんでした)。

カウンセリングと「触れる」こと

さて、カウンセリングや心理療法では、一般的にカウンセラーがクライエントに「触れる」ことはめったにありません。プレイセラピーで子供ととっくみあいをして遊ぶときや、不安が大きい方が握手によって安心する、といったことが例外でしょうか。

あるいは、タッピング・タッチのような方法や、ボディ・サイコセラピーのような、身体に注目したセラピーもあります。

カウンセリングでは、身体的なふれあいよりは、心理的に「触れる」ことが大切になります。

カール・ロジャーズが「建設的なパーソナリティの変化」のための6つの条件の初めに挙げたのが、「2人の人間が心理的な接触を持っていること」でした(その後は、セラピストの自己一致と、無条件の肯定的配慮、共感的理解といった条件が続きます)。

トラウマなどの影響で、自分と他人の境界があいまいになっている人がいます。

そうした人には、ときに自分の身体をタッピングしたり、さすったりすることで、「私の身体」という感覚をはっきりさせるという方法をお伝えすることがあります。自分に触れることで、境界が明確になるのです。

あるいは、テディベアでも他のものでもいいのですが、その人にとって「安全」や「安心」を思い出させる物をお守り代わりにして解離やフラッシュバックへの対処法とすることもあります。

テディベアにかぎらずぬいぐるみや人形は、不安や孤独を抱えている人がお守り代わりにしていることが多いでしょう。ウィニコットは、心の成長や発達において現実に触れていくまでの橋渡しをしてくれるぬいぐるみなどの対象を「移行対象」と呼びました。

よく例に挙げられるのが、スヌーピーに登場するライナスがいつももっている安心毛布ですね。

子どもだけでなく、大人にとっても「移行対象」的なものが支えになることがあります。大切な人からもらったものや写真、思い出の品といったものです。

押し入れやアルバムなどを開いてみて、安心や力強さを与えてくれるものを集めて、箱などにまとめて入れておくこともできます。落ち込んだときや不安なとき、孤独を感じたときにその箱を開けて、ひとつひとつ手に取ってみてください。

安心を感じる対象が手元にあるからこそ、勇気をもって現実に一歩踏み出すことができる、ということもあるのです。

 

【参考文献】

テクタイル『触楽入門―はじめて世界に触れるときのように』朝日出版社、2016年

Kenneth Tai, Xue Zheng, and Jayanth Narayanan, Touching a Teddy Bear Mitigates the Negative Effects of Social Exclusion, Social Psychological and Personality Science. 2, (6), 618-626., 2001

Sander L. Koole Mandy Tjew A Sin Iris K. Schneider, Embodied Terror Management Interpersonal Touch Alleviates Existential Concerns Among Individuals With Low Self-Esteem, 2014, Psychological Science, 25(1):30-7, 2014

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