神戸・芦屋・西宮のカウンセリング・かささぎ心理相談室|臨床心理士
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うなぎの話―カウンセリングの三人目のお客さん

うなぎなるものと小説

今日は土用の丑の日です。
この日にうなぎを食べるという風習が生まれたのは、江戸時代に平賀源内が「夏バテ防止」ということで広告キャンペーンを打ったのが始まりだそうです。
うなぎには本当に夏バテ防止効果があるのかという栄養学的な問題はさておいて、「うなぎなるものと小説」について書かれた文章を少し引用してみます。

村上:僕はいつも、小説というのは三者協議じゃなくちゃいけないと言うんですよ。
柴田:三者協議?
村上:三者協議。僕は「うなぎ説」というのを持っているんです。僕という書き手がいて、読者がいますね。でもその二人だけじゃ、小説というのは成立しないんですよ。そこにうなぎが必要なんですよ。うなぎなるもの。
柴田:はあ。
村上:いや、べつにうなぎじゃなくてもいいんだけどね(笑)。たまたま僕の場合、うなぎなんです。何でもいいんだけど、うなぎが好きだから。だから僕は、自分と読者との関係にうまくうなぎを呼び込んできて、僕とうなぎと読者で、三人で膝をつき合わせて、いろいろと話し合うわけですよ。そうすると、小説というものがうまく立ち上がってくるんです。
柴田:それはあれですか、自分のことを書くのは大変だから、コロッケについて思うことを書きなさいというのと同じですか。
村上:同じです。コロッケでも、うなぎでも、牡蠣フライでも、何でもいいんですけど(笑)。コロッケも牡蠣フライも好きだし。
柴田:三者協議っていうのに意表をつかれました(笑)。
村上:必要なんですよ、そういうのが。でもそういう発想が、これまで既成の小説って、あまりなかったような気がする。みんな作家と読者のあいだだけで、ある場合には批評家も入るかもしれないけど、やりとりがおこなわれていて、それで煮詰まっちゃうんですよね。そうすると「お文学」になっちゃう。
でも、三人いると、二人でわからなければ、「じゃあ、ちょっとうなぎに訊いてみようか」ということになります。するとうなぎが答えてくれるんだけれど、おかげで謎がよけいに深まったりする。『柴田元幸と9人の作家たち』(アルク)

Father William balances an eel on his nose

(鼻のてっぺんにうなぎを立てるウィリアム父さん『不思議の国のアリス』)

カウンセリングの三人目のお客さん

村上春樹さんがここで言っている「小説というのは三者協議じゃなくちゃいけない」というのは、カウンセリングや心理療法でも同じだと思います。
クライエントさんがいて、カウンセラーがいて、でもその二人だけじゃ、カウンセリングは成立しない。そこには「うなぎなるもの」が必要です。

いじわるな姑さんでも、嫌な会社の上司でも、毎晩やってくる悪夢でも、抑えきれない衝動でも、それは何でもいいんですが、クライエントとカウンセラーの関係にその「うなぎなるもの」を呼び込んで、三人で膝をつき合わせていろいろ話し合うことでカウンセリングがうまく立ち上がってくる。夢やイメージが「うなぎなるもの」になることもあります。カウンセラーの方が少し意図して、三人目のお客さんとして描画や箱庭を導入することもあります。

「うなぎ」というメタファーが表しているように、それはつかみどころがなくて「おかげで謎がよけいに深まったりする」ような何かです。カウンセリングに来られる方の多くは、「考えられることは全部してみたんだけどそれでもうまくいかない」「頭では分かっているんだけど、そうできない」といったことで困っています。意識的・合理的な思考や会話で煮詰まってしまったときに、「じゃあ、ちょっとうなぎに訊いてみようか」といえるといいですよね。

ウナギの幼生はレプトケファルスという名前の生き物だそうです。テレビで泳いでいるところを見たことがあるけど、全身がすっかり透明でなんとも不思議で涼しげな生物でした。(久)


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