身近な人を支える言葉

家族や友だちや恋人など、身近な人の元気がないとき、何を言ってあげたらいいのかわからなくて困ってしまうことはありませんか。いつもどおり接するのがいい場合も多いですが、何か言ってあげたいと思うこともありますよね。でも、なんて言えばいいのかわからない。励ましてあげるのがいいのか、そっとしておくのがいいのか。周囲の人への関わり方に悩んで、カウンセラーのところに来られる方も少なくありません。

残念ながら、誰にでも共通するたった一つの正解があるわけではありません。「大丈夫だよって言ってほしい」という人もいれば、「どうしたらいいか具体的にアドバイスしてほしい」という人も。気持ちをわかってほしいという人は多いですが、なかには「わかるわーって簡単に言われると、かえって腹立つ!」なんて言う人もいます。感じ方は本当に千差万別です。

じゃあいったいどうすればいいのでしょうか。もし答えがあるとすれば、それは、せいいっぱい相手のことを考えてみること、です。その人の性格やおかれている状況。その人ならどんなふうに言ってもらいたいか、どうしてもらいたいか。それは「正解」を導き出すためではありません。いくら考えても、相手は違う人間なのですから、本当の気持ち(正解)はわかりません。でも一生懸命考えることには意味があります。それはちゃんと相手に伝わります。極端な話、言葉そのものはなんだっていいのです。大切な人からもらうプレゼントは、物そのものよりも、自分のためにあれこれ考えてくれた、その時間や気持ちがうれしいのと一緒です。

人は落ち込むと、まわりの人とのあいだに壁ができたような気持ちになります。そんなとき、誰かが自分のことを考えてくれていると感じると、ちょっと元気が出ます。気持ちがほっとして、自分なりにできることをがんばってみようという気持ちになれます。不器用な言葉でかまいません。むしろ立派な言葉や正しい助言は、本で読んだりする分にはいいのですが、身近な人に言われると、かえって孤独感を強めることがあります。「自分が言われてうれしかった言葉」も、かならずしも役に立ちません。どんなに素敵な言葉も、「相手の気持ちを一生懸命に考える」というプロセスが抜けていると、言われた人はそれほどうれしくならないのです(役に立つことはありますが)。

いくら考えても、何を言ってあげたらいいかわからないこともあります。そんなときは、「あなたのことを考えているよ」という思いを込めて、笑顔でいつも通りのあいさつをしてあげてください。「おはよう」でも「いってらっしゃい」でも「またね」でも、なんでもいい。一緒になって落ち込んでしまいそうなときは、あなたも誰かに支えてもらうことが必要かもしれません。そんなときは、よかったらカウンセラーを頼りにしてみてください。(A)

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