カウンセリングと心療内科、精神科の違いは何ですか?

ときどき、「心療内科や精神科と、カウンセリング、どちらを行ったらいいでしょうか? どう違うのですか」と聞かれることがあります。

ここでは、ごく簡単に説明を試みてみますね。

精神科と心療内科、カウンセリングの違い

精神科が対象としているのは、統合失調症や双極性障害、うつ病などの精神疾患が中心となります。

心療内科は、ストレスなどの影響で、身体的な症状(胃潰瘍やぜんそくなど)が生じる心身症などを主な対象としています。「内科」と名前についているように、内科医出身のドクターが多いのですが、現実にはちょっとややこしいことに、「精神科出身で心療内科の看板を上げている医師」と「内科もしくは心療内科出身の心療内科医」がいます。

「精神科」という名称の病院では通院しにくい、といったことに配慮してこのようになっているのでしょうが、どの病院を選べばいいのか、迷ってしまいますね。

病院のパンフレットやホームページで、医師の経歴や所属している学会などを確かめると、自分が求めている治療を受けることができるかどうかの判断がしやすいと思います。

では、「カウンセリング」や「カウンセリングルーム」はどう違うのでしょうか?

大きな違いは、カウンセリングが対象としているのは、「心の病気」というよりはむしろ「心や人間関係の悩み」が中心となるということです。

また、カウンセラーは医師ではありませんので、診断や投薬治療は行えません。お医者さんは、お薬を処方したり、生活習慣の改善などのアドバイスや、必要な指示を行うことで、症状を良くしようと試みます。カウンセラーは、相談者の話を聞きながら、相談者自身が問題を解決したり、成長していくことをサポートする役割となることが多いと思います。

医師は多くの患者さんを抱えていることが多いので、初診を除けば診察は15分程度になることが一般的です。その中で、適切な診断や見立てを行い、治療方針を伝え、投薬その他の治療を処方するわけです。

カウンセラーによるカウンセリングは、40分~1時間半程度の枠で行われることが多いでしょうか。また、保険が効かないので、自費で支払う必要があります。料金の相場は、一回5000円~12000円程度と、場所やカウンセラーの経験によっても変わってきます。

精神科・心療内科での保険適用のカウンセリング

「病院で、保険が適用されるカウンセリングはありませんか」

といったことを聞かれることがあります。確かに、民間のカウンセリングは高額ですので、保険診療でカウンセリングを受けたいという希望もよく分かることです。

現在(2020年)、診療報酬が定められているカウンセリングや心理療法はいくつかあります。

たとえば「認知療法・認知行動療法」は、医師が実施した場合480点、医師及び看護師が共同して行う場合には350点の診療報酬が与えられます。日本の医療では、1点10円なので、医師が認知行動療法を行うと4800円の収入になるということですね(ただし30分以上の診療が求められます)。

同様に、標準型精神分析療法は390点と定められています。また、精神科以外の診療科での心身医学療法には、自律訓練法、カウンセリング、行動療法、催眠療法、バイオフィードバック療法、交流分析、ゲシュタルト療法、生体エネルギー療法、森田療法、絶食療法、一 般心理療法及び簡便型精神分析療法などが含まれています。

このように、病院で保険適用のカウンセリングを受けることは可能なのですが、実際には、医師が認知行動療法などを長時間かけて行っているところはあまり多くありません。患者さんが多いことや、医療経済的に「割に合わない」といった理由が挙げられます。

医師の指示のもとで看護師が認知療法・認知行動療法を行うところは、もう少しあるかもしれません。

カウンセラーの国家資格である「公認心理師」が2019年に誕生したので、今後、公認心理師によるカウンセリングが保険適用になっていく可能性はあると思います。ただし、今の日本での医療費や社会保障費の状況を見ると、病院で受けることのできるカウンセリング・心理療法は、時間や期間などが限定されたものとなっていくかもしれません。

現在、医療機関で公認心理師や臨床心理士がカウンセリングを行っているところもあります。

多くは、医師が診察を行って、カウンセリングは医療機関の持ち出しのサービスとして実施されているようです。

どんなときにカウンセリングを受けるのか

では、心療内科や精神科ではなく、カウンセリングが選ばれるのはどのようなときでしょうか?

人間関係の悩み

仕事や恋愛、家族などの人間関係があなたの苦しみの中心にある場合には、カウンセリングが役に立つことが多いと思われます。夫婦関係がうまくいかない、子どもへの接し方が分からないといった人間関係や感情のもつれは、薬では改善しません。

人間関係がよくなると、うつや不安も楽になる

また、うつ病や不安障害、PTSDなどのメンタルヘルスの問題も、人間関係がよくなることで、回復していくことが多いのです。「対人関係療法」という、身近で大切な人との現在の人間関係に焦点を当てた心理療法は、うつ病などの回復に効果があるというエビデンスをもっています。

考え方や性格を変えたい

「どうせ私は何をやっても失敗するに決まっている」といった考え方をもっていると、新しいことにチャレンジしなくなりますし、だんだん気分も沈んできます。

たとえば、認知行動療法では「思考(認知)」と「行動」「感情」はそれぞれ影響を及ぼし合っているととらえています。抑うつや不安などの感情そのものを変えるのは難しいですが、思考や行動は少しずつ変えていくこともできるのです。

精神力動的な心理療法や来談者中心療法なども、自らの考え方や行動をふりかえることを通じて、変化したり、成長していくことを目指しています。

生き方や実存的な問題

仕事や人生の選択などの生き方に関すること、「生きている意味は何か」といった実存的なテーマが大きい場合などにも、カウンセリングが意味をもつ可能性があります。

現在通院中のかたでカウンセリングを検討される場合は、一度主治医の先生に相談してみてください。

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